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「神山さん?」
「あっ、よろしくお願いします」
「大丈夫ですよ。リラックスしていてくださいね」
思わず固まってしまった光輝に、看護師は両目を細めて微笑むが、リラックスなどできるものか。
自分の意思に反して心拍数は急上昇し、掌にも汗が滲む。
だからと言って、手術開始までの時間が止まるはずもなく、緊張した面持ちのまま病室から連れ出されてしまった。
廊下を通る最中、周囲から注がれる視線が痛い。
「どうしたのかしら?」
「まだ若いのに」
そんな声が鼓膜を揺らす度に、やめてくれ! と叫びそうになるのを必死にこらえた。
更に追い討ちをかけるように天井から降り注ぐ蛍光灯の光は眩しく、視界をやけに白くさせる。
覚悟していたにも関わらず、情けないくらいに彼の心は震えていた。
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