復帰

10/23
前へ
/30ページ
次へ
午後六時。 咲は学校から帰るなり、制服姿のまま叔母の居る喫茶店へ向かった。 九月とは言え未だに残暑も厳しく、彼女の顔や背中には汗が伝う。 「こんにちは」 ドアを開けると、窓ガラスから射し込む夕日が店内を橙色に染め上げていた。 「いらっしゃい。ごめんね、忙しいのに呼び出しちゃって」 「大丈夫。それで話って?」 「実はね、奈津子から相談されたのよ。咲ちゃんを大学へ行かせるには、どうしたら良いのかって」 奈津子というのは咲の母親だ。 つまり、叔母……恵津子(えつこ)の妹にあたる。 「なんで、お母さんが叔母さんにそんなこと聞くの?」 「彼女も心配してるんじゃないかしら。咲ちゃん、成績も優秀だから」 その言葉を聞いた途端、咲の目に怒りの火が灯った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加