15人が本棚に入れています
本棚に追加
午後六時。
咲は学校から帰るなり、制服姿のまま叔母の居る喫茶店へ向かった。
九月とは言え未だに残暑も厳しく、彼女の顔や背中には汗が伝う。
「こんにちは」
ドアを開けると、窓ガラスから射し込む夕日が店内を橙色に染め上げていた。
「いらっしゃい。ごめんね、忙しいのに呼び出しちゃって」
「大丈夫。それで話って?」
「実はね、奈津子から相談されたのよ。咲ちゃんを大学へ行かせるには、どうしたら良いのかって」
奈津子というのは咲の母親だ。
つまり、叔母……恵津子(えつこ)の妹にあたる。
「なんで、お母さんが叔母さんにそんなこと聞くの?」
「彼女も心配してるんじゃないかしら。咲ちゃん、成績も優秀だから」
その言葉を聞いた途端、咲の目に怒りの火が灯った。
最初のコメントを投稿しよう!