復帰

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「少し落ち着いて、冷静に話をしましょう。私は咲ちゃんの考えを否定するつもりは無いわ。 ただ、親に学費を出してもらう以上きちんと話をして、納得させる必要があると思うの」 普段は惚けたことばかり言っている恵津子が、珍しく真面目な話をしている。 咲を見つめる彼女の両目は、真剣そのものだ。 「もし、奈津子に直接話し辛いのなら私が交渉の手助けをしてあげる。だから、あなたが今思っていることを教えて? 私も心配してるのよ」 恵津子の言葉に冷静さを取り戻したのか、咲は深呼吸を一度するとこう切り出した。 「実は私、高校に入ってから部活中に怪我をすることが多くて、いつも治療をしてくれる光輝のお父さんに憧れてたの。怪我に苦しむ誰かの力になれる仕事が、とても素敵に見えた……」 咲がゆっくり紡ぎ出した言葉を恵津子は相槌を打ちながら、聞いている。
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