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「もしもし、奈津子? 今、お店で咲ちゃんと話したわ。将来についてはきちんとした考えを持ってる様だから、今晩にでもゆっくり話し合ってもらえるかしら?」
咲には詳しい返事は聞き取れ無かったが、途切れ途切れに、母親の声が聞こえている。
「ええ、わかった。伝えおくわ、それじゃあね」
そう言って電話を切ると、恵津子は咲に向かって優しく微笑んだ。
「お母さん、もうすぐ仕事から帰ってくるそうよ。
彼女も娘のことになるとどうしても感情的になってしまうから、誤解を生みやすいけどあなたのことをすごく心配してるのよ」
「うん、それはわかってるんだけど……」
「大丈夫よ。今みたいに冷静に話せば、親子なんだからちゃんと伝わるわ」
「うん。叔母さん、ありがとう」
「どういたしまして。あっ、ついでに恋の悩みも相談に乗った方が良いかしら?」
「えっ!?」
「あら、冗談よ」
真っ赤になった咲の顔を見ながら、恵津子は楽しげに笑った。
「……それじゃ、帰ります」
いつまでも笑っている叔母に呆れつつ、咲は店を後にした。
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