序章 ここで会ったが何年目?

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  1  桃瀬(ももせ)シャルラは、これ以上ないほどに憂鬱だった。今朝一番に渡された一枚の紙を眺めて、大きくため息を漏らす。どうしてこうなるのだろうか、と考えてみるが何度考えてみてもそれは自分に要因があるとの結論に至ってしまっていた。  自分に役目が回ってくるのはこれ以上ないほどに、誇らしい。桃瀬シャルラはこの国での“捜査機関”のトップである桃瀬一族の宗家であり、齢十六にして様々な事件を解決するために昼夜を問わず走り回っていた。  そのくらいの年端の娘ならば、色恋沙汰やオシャレに現を抜かしているような時期だろう。だが、シャルラにとってそれは不要なものだ。桃瀬の宗家に生まれた以上、シャルラが全力を注がなければならないのは国家の治安を守ること。  この国には所謂、警察というものはない。シャルラの属する組織がそれに限りなく近いが、組織形態が非常に異なる。  “桃瀬”という一族が国全ての事件や事故の捜査や処理を担っていた。捜査にあたる者の全員が全員桃瀬の血族の者ではないものの、陣頭指揮を取るのは一人残らず桃瀬である。桃瀬の当主が桃瀬の宗家に役目を割り振り、桃瀬の宗家が更に細かく割り振りをして分家や使用人などに指示を出すと言う構図で成り立っていた。  一族が全てを掌握しているため身内が起こした事件や事故に甘くなる、ということも往々にしてあるだろう。しかしシャルラはそれを殊更嫌い、許さない。身内が起こしたのならば尚更厳しく対応するべきだし、そうしろと教えられて育った。それは他の宗家たちも同じだと思っている。
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