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そう、シャルラにとって役目をこなすことはこの上ない誇りだ。しかし、こういった類いの事件は酷く乗り気になれない。再び手にした紙に視線を落とす。
嫌だという意識が先行して思わずかぶりを振ってしまった。
「シャルラ嬢、ずっとそんなですが……手に負えないんです?」
一人の若い男が、険しい顔つきのシャルラに臆することなく声をかける。彼は運んできたお茶をシャルラの机の上に置くと、姿勢を正してシャルラの返答を待った。
シャルラは男に視線を向け、ため息を漏らすと乱雑に机の上に紙を投げ捨てる。
「コルン……物、自体は何てことはないの。問題は種類と言った所かしら」
頭を抱えるシャルラの絹糸のように細くしなやかな長い黒髪が肩から溢れ落ちた。彼女は腰よりも長いその美しい髪を頭のてっぺん近くで布地一つで束ねている。所謂、ポニーテールという髪型だった。自ら投げつけた紙をもう見たくはないと言わんばかりに頬を膨らませてそっぽを向く。
若い男――下里(くだり)コルンは仕方ないなと困ったような微笑みを溢して、シャルラが投げ捨てた紙を手にとって目を通した。そうして直ぐにそう言うことかと納得し、シャルラが読めるように向きを正してシャルラの前に戻す。
シャルラはコルンをキッと睨み付けるが、その一連の動きがコルンには可愛らしい行動にしか見えなかった。
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