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「……今日はいいかな。ちょっと出かけてくる」
部屋を見回し、室内にコルンしかいないのを見てからシャルラはため息混じりに答えた。通常の店内が混んでいない状態ならばスタッフルームには数人の情報官が在席して情報の整理をしているが、そう言った情報官もいないとなると従業員のカバーとして店に出ているのだろう。
コルンも珍しく従業員の制服を着ているのだから、余計に手を煩わせてしまうのは良くないと席を立った。
「ご一緒しますか?」
僅かに瞬きを繰り返し、コルンは笑顔で問い掛ける。
「……忙しいでしょう? 私はいいから」
「わかりました。お気をつけて」
「うん、コルンも頑張りすぎないで」
「わかっています。行ってらっしゃいませ」
短い会話を交わしてシャルラが背筋を伸ばしそのまま颯爽と退室していくのを、コルンは深々と頭を下げて見送る。
ドアの締まる音を聞いてから頭を上げて、シャルラが置いていった一枚の紙を手に取った。
「……薬物捜査ですか。シャルラ嬢が気にしているのは“柳林”でしょうかね」
誰ともなく呟く。
「コルン店長、フロント出てもらってもいいですか?」
シャルラがスタッフルームから出てきたのを見たのだろう。従業員の一人がドアを開けてコルンに声をかけた。
「了解。今、行く」
紙を机の引き出しに仕舞い、コルンも足早にスタッフルームを後にする。
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