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「行け…」
老人の一言に少女は頷くと、目を閉じビルの屋上から飛び降り地面に向かい真っ逆さまに落ちていく。
凄まじいスピードで風を切りあっという間に地面が迫ってきた。
少女は目を開くと地面すれすれで反転し、何事もなかったかのように静に着地した。
少女は何食わぬ顔で右手に握られた鞘から刀を抜き一点を見つめた。
視線の先にはこの世の者とは思えない得体の知れないものがいた。
少女は刀を構え一呼吸置くと、その得体の知れないものに襲いかかった。
得体の知れないものはその太刀捌きに一瞬で真っ二つにされるが、次々にあらわれた。
しかし少女は次々に斬り捨てる。
気づけば辺り一面は得体の知れないものの屍で一杯になっていた。
やがて屍は溶けて消えた。
その消えた跡には光る宝石のような物が転がっていた、少女はそれを拾い集めた。
「ふぅ…」
少女は拾い集めた宝石のような物を両手一杯に持ちため息ついた。
「これじゃあんまりお金にならないな…」
「嘆くでない、下級妖魔しか現れないのは良いことじゃ」
先程少女と一緒にいた老人が、少女と同じ様に屋上から飛び降りてきた。
「でもお爺ちゃん、稼ぎ少いとご飯食べれないよ…」
「うむ…」
「お母さんのパート代とお爺ちゃんの年金だけじゃ生活キツいよ」
「うむ…」
「まあいいや…帰ろうお爺ちゃん」
「…」
少女と老人はその場を去った。
妖魔…それは遥か古より存在し、人の魂を食らい災いをもたらす者。
妖魔との対峙を宿命付けられた戦士達は気の遠くなるような日々を戦ってきた。
しかし人々はあまり妖魔の存在を知らない…それは幸せな事なのかもしれない。
そして少女…仙道花菜美も妖魔と戦う事を宿命付けられた者の一人だった…。
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