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医務室に戻ったティオは、すぐに水のティオに合う服をさがした。
「ひどいよ、イグノトルさま。あんな言い方しなくたって……」
色は白しか持っていないのは知っていたが、念のため探してみる。
並んだ白さに諦め、どうぞと白い服を差し出す。イグノトルが最初に揃えてくれた服はゆったりしていたから水のティオでも着られるはず。
「ありがとう。……現実だ。ああ言ってくれたから甘えられる」
胸に、覚えのある痛みが走った。
「う……」
「ごめん、主に別のティオが近づくのは嫌なものだとわかってる」
「ざわざわするんだ。これ、なに?」
「嫉妬だよ。ティオは主を自分だけのものにしておきたいんだ」
「あ……」
でも、水のティオに元気になってほしいのも本当の気持ちだ。イグノトルが好きで、独占したい気持ちと反発していたらしい。
「ごめん。すぐに消えるよ。今だけ……すこし」
「だいじょうぶ。理屈がわかったから。ちがう病気かと思ってただけ」
「あの時は……ごめん」
「なに?」
「君が天使に捕らえられて囮に使われてると思ったから仲間を逃がした。すぐに誤解だとわかったけど、面識のない天使さまだったから、とっさに逃げてしまって」
「そうだったんだ……」
「主に出会えたんだね」
「うん。痛い?」
「今は平気。気が昂ぶってるからだと思うけど」
「よかった。……あなたが無事で」
「……君も」
えへ、と水のティオの片腕にすり寄った。
イグノトルは気配を消し、医務室の扉へ近づいた。
「それだけわかればいいんだ。睡眠薬だけひとつ、もらえないかな」
「なっ、なに言ってるの。だめだよ、イグノトルさまが帰るまで、待って」
「君が王宮まで無事に帰れたら、それでいい」
「やだ、行かないでっ」
自分の知らないティオの仲睦まじさに耐えきれず、扉をひらいた。
「ただいまあ、お待たせ」
「わあ……っ、気配しなかったよっ」
「水のティオが逃げるといけないと思って」
「そ、そうだっ、イグノトルさま、水のティオが出てくって言うんだ、止めてあげてっ」
水のティオは、無表情だった。
「あのティオはどうなりました?」
「誕生日だけ聞いといたけど、どうする?」
「追わないでください」
「そう。まあ行き先が決まるまで、ここにいればいいよ」
「不法所持に……」
「ならないよ、大丈夫。私は国王からどれだけティオを泊めても罪には問わないって許可をもらってる。ま、そんな人数を泊められるほど広くはないから、嫌味だったのかもしれないけどねえ」
水のティオが笑顔をみせた。
「この子に迷惑ですから」
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