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そんな時、声と共に現れたのは、漆黒のマントに身を包んだ男。
「まあいいか。見て見ぬふりは俺の流儀に反するからな」
喉を咬み切ろうと飛び掛かった虎猫は、ただの生温かい物体に成り下がっていた。
「しかしまあ、本当に面倒くさいな」
虎猫達は、すぐに逃げ出せばよかった。
否、いつもの奴らなら生存本能に従って一目散に逃げていただろう。
それなのに…
「纏めてかかってこい。その方が手間が省ける」
何かに憑かれたかの様に飛び掛かる虎猫達。
奴らに待っているのは、ただ“死”の運命のみ。
「…ふん」
マントがはためく。
虎猫達が宙を舞う。
「…さて、お前はさっさと帰りな。夜は人の出歩く時間じゃない」
積み上がる虎猫の死骸。
「あのっ、あり…が……と………」
「見るな。礼も要らん。さっさと失せろ」
少女は言葉を失う。
見てしまったのだ。
男の瞳が赤く紅く朱く輝いているのを…
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