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「っ!!」
「ん?何だ何だ?」
突然、目の前を元気に歩いていた鈴は体を震わせると、一目散に俺の影に隠れた。
前を見ると……
「あら?蓮くんおはようございます」
淑やかな美少女が一人。
なるほど、そう言えば鈴にも弱点があったな。
「おはよ、摩周」
白い肌は淡雪のように美しく、背中を隠す程長い黒髪はまるで黒蜜を流したよう。
華奢な体格も相まって、触れると消えてしまいそうに儚い。
守ってあげたい女子の代表格であり、熱狂的なファンも多い。
鈴をも超える人気を誇る存在。
だが、その外見に騙されてはいけない。
座学成績1位、闘技場順位3位。
“静寂の撫子”の称号を持つ十傑の一員。
歴代学園生で10人もいない、全ての禁書の閲覧を許された者でもある。
正真正銘の化け物。それがこいつ―木田 摩周(きだ ましゅう)だ。
とにかく、座学は超優秀、戦闘技術もトップクラス、容姿も端麗。
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』
なんて言葉は、きっとこいつの為にあるに違いない。
ただ1つ難を挙げるとしたら……
「クンクン…鈴ちゃんの匂い!……見つけた!!ああ…愛しの鈴ちゃん、今日も麗しい!ぎゅうってさせて!!!」
「ひぁっ!?や…やめっ……嫌ー!!!」
『幼女を見ても百合の花』
ってところだろうか。イサゴ兄とは気が合いそうだ。
……いや本当に、清楚な雰囲気とか全部台無しだよな。残念美人の枠を超越してヤバい奴だ。
まあ、こんな奴でも俺の親友であり、俺の親友の彼女でもある。
逮捕される前に止めてやらないとね。
鈴もそろそろマジ泣きしそうだし。
摩周は戦闘技術でも鈴より上だから、イサゴ兄みたいに実力で制裁することも出来ないのだ。
「あー、摩周?そろそろ放してやったらどうだ?」
「鈴ちゃん可愛いよぉ……ペロペロしちゃお♪」
「やめろー!!」
「鈴も嫌がってることだし……」
「ああ…鈴ちゃんのほっぺはなんでこんなにぷにぷになのかしら……!いつまでも頬擦りしていたいわ!!」
「あぁぁぁぇえぇぁぇぇ…」←超高速の頬擦りをされている
「潤んだ瞳…ふっくらした唇……はっ!いけない、危うく理性が飛ぶところだったわ!!」
「まだ飛んでなかったの!?」
「…」←生ける屍
「あ、チャイム…」
「えっ?もうそんな時間!?鈴ちゃん、また遊ぼうね♪」
「…」←生ける屍
摩周は動かなくなった鈴を俺に預けると、名残惜しそうに去っていった。
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