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「…きて」
誰かに体を揺すられる。
「お…てよ、おにいちゃん」
ああ、俺を起こそうとしているのか。だが、敢えて無視する。
適度に揺すられるのは結構気持ちいいし、もう少しだけ寝させて貰おう…
「むー、なかなか起きない…。しょうがないなぁ」
声の主は俺を揺り起こすのを諦めたらしい。ちょっとだけ名残惜しいが、これはこれで心置きなく眠れるってものだ。
「スーー…」
スーー?
「おっきろおぉぉー!!!」
「ぬおっ!?何だ!!?」
思わず飛び起きる俺。ここは…教室か?そう言えば、1限の先生が入ってきて…その後の記憶が曖昧だ。どうやら、また居眠りしていたらしい。
そんな俺の名前は紅 蓮。「ぐれん」ではなく、「くれない れん」だ。
このかなり変わった名前を除けば、メガネと糸目くらいしか特徴のない、ごく平凡な高等部2年生。成績は平均程度だし、髪はこの辺りでは最も一般的な黒で、染めたりもしていない。せいぜい、他の奴らより座学の時間に居眠りが多いくらいで、後は特別目立つ言動はしていないはずなのだが…
「また鈴ちゃんに起こして貰ってるぜ」
「1度でいいから代わって欲しいよな」
「…」
どうも、普段つるんでいる奴らのせいですっかり有名になっちまっているらしいのが悩みの種だ。
俺はただ、平凡な学園生活を送りたいのだが……
「やっと起きたよー。まったくもー、おにいちゃんはりんが居ないとダメダメなんだから」
「うるせえよ、眠いときに寝て何が悪い」
俺が目立つ最大の原因であり、今しがた安眠を妨害しやがった奴を睨み付ける。
自然と目線は下を向く。
「せっかく可愛い妹に起こして貰っているんだから、ちょっとは喜びなよー」
そいつはぷっくーっ、と頬を膨らませながら睨み返して来やがった。
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