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「い、いやぁ、鈴は本当に可愛いのにしっかりと自分の意見を持ってて偉いな、って言ったんだよ」
「んもぅ、そんなこと言われると、りん恥ずかしいよぅ…」
慌てて言い直すと、鈴は可愛いセリフを可愛く言いながら、可愛く照れて見せる。
今の今まで恐ろしいほどの殺気を纏っていたとは到底想像がつかないほどの愛らしさ。
あまりの変わり身の早さに戦慄した。
「か、かわいい…!!」
「鈴ちゃんマジ天使!」
「あの笑顔を向けられたら、俺死んだっていい!!」
あー、もう無視だ、無視。
「ところで、次は何限だ?」
「何言ってんの?今は放課後だよ?」
えっ…?
慌てて外を見ると、確かに空は赤く染まっていた。
おいおい、俺、寝過ぎじゃね!?
「そんなことより、せっかくだからお家までおんぶしてよ」
「何がせっかくだから、だよ!自分で歩け…わかったわかった、おぶったまま帰るからナイフ押し付けんな!!」
「わーい、おにいちゃんだーい好き!!」
こんな妹のせいで、シスコン兼ロリコンとして有名になってしまったのだ。
本当はそんな気はこれっぽっちもないのに…。
「おい、今の録音したか!?」
「いや、今回も逃しちまった」
「俺は鈴ちゃんの『おにいちゃんだーい好き』ボイスさえあれば、ご飯10杯はイケる!」
「オレはむしろ、あのボイスさえあればメシなんか要らねえ!!」
はあ、マジであいつらなんとかならねえかな…。
校門までの道をゆったりと歩く。
美しい赤に染まった世界で、夕焼け色の枯れ葉がひらひらと舞い落ちる中、背中には妹の温もりを感じ…
首筋に触れる冷たいモノのせいで、色々と台無しだった。
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