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廃墟の群れを歩くこと十数分、突然現れる小綺麗な一軒家……の隣にある、今にも崩れ落ちそうなオンボロアパート“すきま風が寒荘”がりん達のおうち。
なんでこんな変な名前にしたのかは未だに謎だけど、実際すきま風は酷い。
「たっだいまー!」
「…」
おにいちゃんの背中で元気に挨拶。
やっぱり挨拶は大事だよね?
「おにいちゃん、ただいまは?」
「どうせ誰も居ないんだからいいだろ」
「た・だ・い・ま・は?」
「わかった、言うからナイフは仕舞え!…ただいま」
りん達の「ただいま」に返事をする者はいない。訳あっておにいちゃんと2人で暮らしているからだ。
「さてと、おやつおやつ♪」
「はぁ、やっと降りたか」
「おかえりー!鈴ちゅゎーん!!」
「ぎゃぁー!?」
「ふごっ!?」
その誰も居ないはずの部屋から全身真っ黒な変人が抱きついてきたものだから、思わず金的に蹴りを入れちゃった。
「なんだよ、イサゴ兄。また来ていたのか?」
「…えっ?イサゴお兄ちゃん?」
「いきなり男の急所を蹴り上げるとは…いや、でも鈴ちゃんの可愛いアンヨがオレのアレを刺激したと思えば…ふべっ!?」
「死にさらせ!この変態野郎がっ!!」
あ、おにいちゃんにトドメを刺された。
この全身真っ黒な塊は、りん達のアパートの隣、あの小綺麗な一軒家に住んでいる謎の生き物(多分人間)である。
漆黒のマントに身を包み、そのマントの下には黒の長袖。
穿いている長ズボンも黒ければ、靴下も黒。そう言えば玄関に黒の革靴が置いてあったような…。
いつでもどこでも着用している手袋も当然黒。
さらには、顔を黒のマスクとゴーグル型のサングラスで隠し、その上から黒の覆面を被っている。
唯一何にも覆われていない髪は、やっぱり黒。
極め付きはその名前で、黒崎 黒砂(くろさき いさご)と、黒の字が2つも入っている。
こんな真っ黒不審者な出で立ちのイサゴお兄ちゃんだけど、事実初等部の帰宅時に必ず現れる不審者として学園新聞に載っている、正真正銘の危険人物だ。
「ちょっと!?勝手にアブナイ人認定しないでよ!」
「いや、どこからどう見てもアブナイ人…そもそもイサゴ兄って人なのか?」
「と言うか、もう復活したの!?」
…まあ、悪い奴ではないんだけどね、きっと。
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