透明

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「ねぇ、彩乃聞いてる?」 「ん!?ごめん、なにかな?」 まったくもう───そんな呆れ半分の溜息が前方から私を覆う。 上の空で聞いていなかった私を、ピシッとした姿勢で、凛とした瞳で見つめてくる。 サラサラで艶やかな長い黒髪、それと全く同じの黒い虹彩が放つ光には学校中の男子が寄って集まるだろう。 スラリと高身長で女の私でも見惚れるほどの美貌の持ち主は、それでも気取らずに言葉を投げかけてくれる。 「どうせ彩乃のことだし、あの美術室の絵が気になってるんでしょ?」 「どうせって酷いよ虹々ちゃん」 「ごめんごめん。でも、そんなに気になるなら美術室に入ってみればいいじゃない?」 「うーん、入り難いんだもん。なんていうのかなオーラとか、空気みたいなものが。選択美術でもないしさ」 「気にし過ぎだと思うけどね彩乃は。私も付いて行くから放課後行ってみる?」 「ありがとう。でも虹々ちゃんお家の用事があるって言ってなかった?」
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