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「たまには本家に顔出しなよ四季、お母さんは心配してるから」
「……わかってる、そのうち行くから」
表情一つ変えずそれだけを言い残し、お昼休みの喧騒に紛れるように教室から消える。
そんな後ろ姿を虹々は真っ直ぐと見据えるのみだった。
私にはわからない何かがあるのだろう。
御曹司である四季さんは、一般の私からは想像もできない何かが。
そして区切りが良いように、けたたましいチャイムが鳴り響く。
ぞろぞろと皆、自分の席へと戻っていく。
「彩乃、放課後までにはちゃんと決めておいてよ?」
「うん」
優等生である虹々ちゃんも戻っていく。
ふう、と肺の空気を吐き出して、窓の外を眺めてみる。
暗い空に、艶る様々な色の葉。
何処か冷たく無機質な外は、やっぱり冬の到来を告げているようだった。
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