透明

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I 放課後、下駄箱へ向かう人達に逆らって廊下を進む。 各教室から届く騒がしい声も、廊下の端で笑う男女の声も、全てが耳につかない。 何故か胸の内から湧く緊張と焦燥感。 いけない事をしているという感覚に身は燃やすように熱い。 隣には虹々ちゃんが居てくれているというのに気さくに話すことも出来ないでいる。 それを察してくれているのか、黙って横を歩いてくれている。 この子は本当にパーフェクト美人ちゃんだよなあ。 才色兼備という言葉が良く似合うと思う。 2人で並んで階段を上がり、途中の踊り場からチラっと覗く外は薄暗くて木の天辺も見えた。 それから2回の角を曲がって、目的地の美術室が視界に入る。
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