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あぁ、駄目だ。手汗が滲む。
心臓が跳ねる。
なおも近づき、扉の前で立ち止まると、もう身体ごと揺れてるんじゃないかなってくらいにドキドキに惑わされてる。
深呼吸になんか気が回らなくて、手には力が入って。
うーん。どうしよう、やっぱり入り難い。
今の私にはスライド式のその扉は、聳え立つ石の門に見える。
ちくしょう、なかなかやるじゃないか羅生門め。
とうとう脳に支障を来しそうになった瞬間。
トン───と眉間に衝撃が走る。
「シワが寄ってる。ふふ、折角の10代の潤い肌が台無しよ」
と、私の眉間に人差し指を突き刺して笑う虹々ちゃん。
そしてこう続ける。
「躊躇うのなら、やるべきではない」
───そう親には言われたわね。と私を正面から見据える。
「彩乃には申し訳ないけど、私には何を躊躇してるかわからない。でも選んだら自分の何かが変わってしまうと思うと怖いよね」
脳内に強く響く声。
残響してる、波紋みたいだ。
虹々ちゃんは知っていたのか。
私がドキドキしている、理由。
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