透明

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しばらくボーッと立っていただろうか、虹々ちゃんから声を掛けられるまで気が付かず自分の世界に浸ってしまっていた。 「彩乃、お目当ての絵ないの?」 「あ、いや違うよ。少し圧倒されてただけ。でも私の見た絵はないかも」 ここにあるのはキャンバスに描かれているのはどれも抽象画ではない……はず。 美術は詳しく知らないから何とも言えないけど、ないことは確実だ。 ミルク色が混ざった淡い青、わざと混ざりきらないその色に鮮烈な橙色が映える。 さらに上塗りされたように桃色や黄色、赤のライン。 一瞬ではそこまでしかわからなかったけど、ゆっくり見たらまた違った色が隠れてる、そんな気がする。 どこにあるんだろう。 「私はそろそろ行かないと行けないけど、彩乃はどうする?」 時計をみると、4時を半分過ぎた頃になっていた。 うーん、美術部員さんに訊けばわかるかもだけど、今日は定休日?
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