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「じゅ、十六歳です、王子様」
蚊の鳴くような声で答える。
普通に見れば、おそらくレントはそのくらいの歳の少年にしか見えないはず。
種族の違いなのか、人間の青年よりも常に幼くみられる。
本当は十七だから、目の前にいるディナフェル王子とも大して違わないはずなのだが。
そんなことは知るはずもない王子は、レントの答えに何やらひどく満足そうにうなずいた。
「十六か。まだ子供だな」
どこか甘く感じられる声で囁きながら……手でレントの茶色い髪に触れて来て、親指の腹で唇の端をゆっくりと撫でた。
今にも大声で叫んで逃げ出したいのを我慢していたら、柄にも無く体が震えてしまった。
それをいいように勘違いしたのだろう。王子がうっとりと眼を細めた。
「震えているのか。ますます可愛いな」
顔が、さらに、近づいてくる。
「決めた。お前、今夜から俺の側小姓(そばこしょう)になれ」
紫の瞳で見つめながら頷いて、そう言うではないか。
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