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やってしまった。
あろうことか、一番警戒させてはいけない相手の前で。
咄嗟とはいえ、隠しておくべき能力をあっさりと見せてしまったではないか。
レントはどうしようもない後悔に、もう立ち直れそうにない。
「お、お怪我はありませんか、王子様」
おろおろしながら、王子の前で縮こまっているばかり。
「あ……ああ、大丈夫だ」
王子は、なにやらまだぼんやりとした顔でレントを凝視している。
いきなり刺客に襲われたのだから無理もないだろうか。
それとも、レントの素早さに度肝を抜かれたか。
しかし、王子の命を奪おうとするなんて。いったい、誰の差し金なのだろう。
「驚いたな。お前、どこの村の者だ? いったいどこで武術を習った」
呆然と呟く王子の声に、レントは我に返る。 まずい。やはり、普通ではない敏捷さを怪しまれてしまったようだ。
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