第1話 料理見習い

2/7
前へ
/96ページ
次へ
1 料理見習い  料理見習いの少年、レントには、誰にも言えない秘密の使命があった。  彼はその使命を遂行するため、ここルジェー城の料理番見習いとして、数日前から住み込んでいる。  レントは濃い茶色の髪に薄緑の瞳、痩せた体つきの小柄な少年だ。  本当の名はレントシエラというのだが、城では素性をごまかすため、レントと名乗って雇われた。  彼の使命は、一刻も早く果たさなくてはならない切迫した任務でもあった。  そのための第一課題はこの城の地下牢の鍵を手に入れることだ。  地下牢には、彼の仲間数名が囚われているはずだった。  その地下牢の鍵は現在、城主であるコルドノア国王の後継ぎで、城の警備隊長でもある第一王子、ディナフェル・コルドノアが所持、管理しているらしいということは、事前に潜入している仲間が入手した情報でわかっていた。  なんとかしてディナフェル王子に近づき、鍵を手に入れなくてはならない。  そう思い気が焦りながらも、日々厨房での雑用に追われるうち、チャンスに恵まれず数日が過ぎてしまった。  しかし、今夜、ついにその機会が訪れた。 
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加