第1話 料理見習い

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 レントは厨房の親方から、翌朝の料理に使うハーブのフェンネルを少し採ってくるように言われた。  裏庭へ行くついでにと、勝手口から出た辺りで、王子の居室や地下牢の場所でもわからないものか、と、建物の配置を少しばかり確認していると。  ふと、人の気配を感じた。城壁の上に造られた見張り台に、人影がある。  慌てて身を隠し、様子を窺った。  城の裏門に近い見張り台の端で、その人影は月明かりに映し出され、石の柵に肘をついて俯いたシルエットを見せていた。  マントを羽織っているようだから、兵士以上の身分だろう。   何をしているのだろう。  あんな場所で肘など突いて、もし、暇に飽かして居眠りをしているのでなければ、何か考えごとにでも没頭しているようにしか見えない。  確かによく見ていると、ふうっと肩を落として溜め息をつく様子も見せる。  こんな時間に考えごと? そんな物好きな兵士がこの城にいるのだろうか。  見張りの兵にしては、どうやら身に帯びる雰囲気が異なるようだ。 
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