第1話 料理見習い

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「あの、料理長から、明日の朝食に使うハーブを、裏庭から採って来るように言われまして……」 「ハーブ?」  ディナフェル王子は、興を覚えたように、クスッと笑いながら、聞き返してきた。 「ハーブの畑なら、こことは反対の方だと思うぞ」 「そ、そうなのですか。すみません!」  できるだけ不自然にならないよう、慌てたふりをした。 「まだ不慣れなもので、道に迷ったようです」    王子の形のいい紫の目が、なぜだかスッと細められ、上からじっくりとレントを見下ろす。    疑っているような目ではなかった。   疑っているのでなければ、何を考えているのだろう?
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