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2 側小姓ってなんですか
急いで言いわけをしようとした時だ。
王子の手がいきなりレントの右の手首を握った。
「あ! 何を!」
細い指なのに、握る力は強かった。そう簡単には振りほどけないほどだ。
噂では、王子は十八歳だというが、剣と弓では誰にも劣らないと聞く。
その他の格闘技全般も、よほど鍛錬を積んでいるのだろう。
いや、本気を出せば、実はレントだって決して負けてはいないのだが、今ここで、隠している力を披露してしまうわけにはいかない。
「何も探ってなどいません。どうか、お放し下さい!」
必死でもがく振りを装って、王子の出方を待った。
すると王子は、一体何のつもりか、レントの顔に細い金糸のような前髪が触れるほど、その端正な白い顔を近づけて来た。
紫水晶みたいな瞳でレントの目を覗き込む。
それから悪戯を思いついた子供のように、唇の端を上げて笑った。
「お前、レントと言ったか。なかなか可愛い顔をしているな。いくつになる?」
(なに? カワイイだと? オレは男だぞ? 頭でもおかしいんじゃないのかこいつ! それともオレをからかっているのか?)
レントは、いきなりのふざけたセリフに、侮辱された気分になるのを抑えられなかった。 ついムッとした顔になったが、ここはぐっと我慢して、従順な振りをしておくことにした。
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