717人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
夕食のちょっとまえ、こっそり家を出る。
沈んでしまった太陽を追いかけるように、五〇メートル走よりちょっと長い距離を歩いた。
雪がちらつくなか、自分の息が目のまえで白く変わる。
そんな寒さも忘れるくらいに、緊張とわくわくした気分とごちゃまぜになって、わたしの足は逸(ハヤ)った。
目指す教会はそびえるようというよりはひっそりとしていて、遠目から見ても古びていた。
クリスマスの一週間まえになると、不用心にも二十四時間、なかまで開放されている。
ステンドグラスがはめられた扉を開け、なかに入ってチャーチチェアを見渡す。
だれもいなくて、ささやかにうれしくなった。
チャーチチェアは、わたしみたいな子供だったら五人くらい座れるだろう。
二列並んだその間の通路を迷いなく進んだ。
最初のコメントを投稿しよう!