アメージンググレイス

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夕食のちょっとまえ、こっそり家を出る。 沈んでしまった太陽を追いかけるように、五〇メートル走よりちょっと長い距離を歩いた。 雪がちらつくなか、自分の息が目のまえで白く変わる。 そんな寒さも忘れるくらいに、緊張とわくわくした気分とごちゃまぜになって、わたしの足は逸(ハヤ)った。 目指す教会はそびえるようというよりはひっそりとしていて、遠目から見ても古びていた。 クリスマスの一週間まえになると、不用心にも二十四時間、なかまで開放されている。 ステンドグラスがはめられた扉を開け、なかに入ってチャーチチェアを見渡す。 だれもいなくて、ささやかにうれしくなった。 チャーチチェアは、わたしみたいな子供だったら五人くらい座れるだろう。 二列並んだその間の通路を迷いなく進んだ。
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