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招待状の差出人
夜の八時まえ五分。
招待どおり、ビジネス街から裏へと入った通りをずっと奥に歩いて、目当ての店を見つけた。
店に入ると、ドア鈴の音と一緒にピアノ曲が聞こえてくる。
二歩進むとはじめて訪れたおれを見て、マスターと思しき五十歳くらいのスマートな男が、カウンターの向こうから手招きをする。
そして、出入り口の傍にあるコートかけを指差した。
「コートはそこだ。何を飲む?」
マスターの渋面は年中そうなのか、歓迎する気が見えず、云い方もぶっきらぼうだ。
「ノンアルコールならなんでもいい」
マスターは鼻先で笑い、背を向けて勝手によそい始めた。
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