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ローエが目指していた『プルミエ村』は、結樹の視界から外れた数百メートル先に存在した。
この距離でも村全体が目に収まりきってしまう小さな村だ。
それでも明らかな人村があるという事実に、結樹は少しだけ安堵感を得ることができた。
そしてプルミエ村の目の前に到着すると、少し特殊な構造をしていることに結樹は気付いた。
まず恐らくは村全体を囲むように突き刺さっている杭のようなもの。
大きさは結樹の世界の歩道にあるポールくらいだ。
それが2~3メートルの間隔で地面にしっかりと固定されている。
けれど2~3メートルの間隔を唯一破っているのが僕たちの目の前。
そこには木で作られた大きな門が設置されていた。
扉はないが、門番だと思われる鉄の防具で武装された人間が二人立っている。
門番二人は結樹たちの存在にとっく気付いていて、警戒されているのが目に見えて分かった。
だがローエは何も気にせず、門へと歩いて行く。
なので置いてかれたくない結樹はビクビクしながら、彼女の後ろを着いて行った。
「お前たち、村の人間ではないのに何用だ」
門に辿り着くと、門番がローエに疑問をぶつける。
怪しければ容赦しない、といった感じの雰囲気が結樹にもひしひしと伝わり、脂汗が滲み出てくる。
「『ショワズィール騎士団』のローエ=シュアインだ。今は休暇中だが、プルミエ・ボワで記憶喪失の少年を保護したので最寄りのプルミエ村を訪れた」
ローエは臆せずに用件を正確に伝えた。
自分が記憶喪失扱いされているのにはちょっと気になった結樹だが、異世界から来たと伝えるよりは受け入れやすいだろうから黙ることにした。
「ショワズィール騎士団の剣士様でありましたか! 無礼な真似をお許しください。どうぞ、ご入村ください」
どうやらローエが口にしたショワズィール騎士団というのは、相当知名度があり偉いらしく、門番はすぐに謝罪をしながらどいてくれた。
結樹は、ローエと出会えたことが想像以上の奇跡であったのだと再認識した。
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