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「……ぅ……」
妙な眩しさと不思議な感覚を感じながら、神坂結樹(カンザカ ユウキ)はそんな呻きを上げた。
いつも、部屋を真っ暗にしてカーテンを閉め切って寝るので、この眩しさはおかしいのだ。
更にだんだんと鮮明になってくる感覚が、結樹に状況の異常さ教えてきた。
枕と敷き布団の柔らかさで安眠しているハズだったのに、今は何故か所々固くてチクチクする。
───まるで外でそのまま雑魚寝しているかのような……。
そんな2つの疑問を解消するには、サッサと目を開けるに限るだろうと心の内で結論付けた結樹はゆっくりと瞳を開けた。
まず見えてきたのは済んだ青い空だった。
……この時点で部屋で寝ていたハズの結樹にしてみれば、既におかしい訳なのだが、
身体を起こしてようやく見えた現在地の光景に、目を見開いて驚愕した。
「……ど、何処ここ……?」
結樹が何となくて想像していた通り、彼が寝ていた場所は雑草の上であり、
そして───周りは鬱蒼とした木々で一杯であり、つまりは森の中だったからだ。
今一度、幻覚から戻る為に目を擦ったが、光景には何の変化もない。
鳥の囀りがよく響く、森の中。
回りの木々がそびえ立っている。
「ハハッ……悪い夢でも見てるのかな、僕は……」
結樹はそう呟きながら、ベタではあるとはいえ確認の為に自分の頬をつねってみたが、
「あ"っ、あ"だだだだだだっ!!」
少し力が強かったせいで、かなり本気で痛かった。
………………。
「……何も持ってないし、何も落ちてないかぁ」
頬をつねった痛みのお陰か、寝惚けていた頭がスッキリしたらしい。
なので結樹はとりあえず、不安や恐怖を心の奥へと押しやり、身の回りの事を調べることにした。
現在分かったことは、結樹は財布や携帯も含めて何も持っていないこと。
そもそも寝着用のTシャツとスウェット寝ていたハズの彼が、Tシャツの上にパーカーを着用し、下にはこないだ買ったばかりのジーンズを履いているのも不思議である。
その事は結樹を安心させる所か、より不安を掻き立てた。
「何が何だか……」
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