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「文字は……うわっ、何書いてるのか全く分かんないや」
結樹は墓石に彫られている文字を読もうとしたが、ハングル以上に意味の解らない言語だった為に一歩後ずさった。
「本当に日本なのかな……ここ」
彼がそう呟いた直後───
獣の唸り声のようなものが、周りに響き渡った。
「っ!?」
結樹は条件反射レベルで素早く振り向く。
しかし後ろにも、前にも、左右にも、何の姿を見えない。
だが、何かが雑草を踏みしめながら歩く音がする。
それは確実に、結樹の元へと近づいている。
(な、何が……来てるんだ!?)
必死に声を出さずに音とは逆方向へと後ずさっていく結樹。
その顔は恐怖に染まりきっていた。
「グヴヴヴ……」
そして遂に、唸り声を上げて近付いて来ていた「何か」が森林の間から結樹の視界に入ってきた。
頭部は完全に狼そのものだが、
首から下は屈強な男性のような二足歩行で、
全身が銀色の体毛に覆われきっている。
まさに「狼人間」と総称するのが相応しい生物だった。
(は、はぁ!? あんなんいるなんて図鑑でもニュースでも聞いたことないよ!!? というよりも、これ完全に僕ロックオンされてるよねっ!?)
想像もしてなかった猛獣の登場に恐怖と不安に強く襲われた結樹だったが、意外と冷静に状況を判断していた。
そのお陰か、すぐに振り返って全力ダッシュで逃亡するという選択をすることが出来た。
「ガウッ!!」
狼人間も結樹(エサ)の逃亡に即座に反応し、同じように二足歩行で追いかけ始めた。
結樹は心の底から、今日は何て最悪な日だ!と連呼していた。
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