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誤解というか状況の思い違いの相互理解が何とか済んだ二人は、一先ず移動しながら会話を始めた。
「まず、あのモンスターについて説明しよう。あれは《ルヴトー》と呼ばれている。鋭い爪を武器にする単調な攻撃しかしないが、脚は早いし力もある。生半可な実力の戦士でもやられたりする危険なモンスターだ」
「モ、モンスター……」
その総称の段階で結樹は戦慄した。
モンスターなんて空想上の作り話でしか存在しないものだとばかり思っていたからだ。
しかし目の前で狼人間なんてあり得ない生物を見てしまった以上、もう信じるしかなくなってしまった。
「次にこの森についてだが、『プルミエ・ボワ』と呼ばれている。近くには『プルミエ村』がある。今はそこに向かっているところだ」
地名を聞いた段階で、結樹は悟った。
ここは日本じゃない。
──もしかしたら、創作物でありがちな「異世界にやって来ちゃいました」ってことなのかもしれない。という考えにまで至っていた。
でもやはりそれは明らかに現実離れしすぎている。
結樹は昨日、いつも通りに風呂に入ってパジャマに着替えて、歯磨きをして就寝したのだ。
それが起きたら普段着になっていて森に放り出されていたんだ。
「ねぇ、ここの国の名前は何ていうの?」
だから確かめる為に結樹は自分から質問をした。
すると白髪の女性は静かに答えた。
「『エペマジー・アンピール』。通称、『エペール』と呼ばれている」
やはり結樹が知らない国名だった。
そして確信した。
自分は異世界に来てしまったのだと。
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