第四章

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 水谷夏乃です。こんにちは。  少し私のひとりごとにお付き合い下さい。  ──櫻野先輩が転校して一学期が終わり、夏休みになりました。  櫻野先輩とのことがあってから、ふと寂しそうな顔を見せるようになった左京君は、少しずつ何か乗り越えようとしているようです。私は近くで見守ることしかできません。  右京君は、一学期の間に少しずつ変わってきて、櫻野先輩の依頼の後、また一段と変わった気がします。もちろんいい意味で、です。時々、クラスメイトと一生懸命に話す姿を見かけるようになりました。「最近、橘兄変わったよね」「実はけっこう可愛いとこあるよね」なんて声が聞こえるようになりました。一部の人だけが知っていた右京君の一面を皆に知られてしまうのは、いい事だけどちょっと寂しいです。  そんなことを左京君とも話していました。本当に左京君は右京君が大好きです。私も右京君が好きです。だからこそ左京君と気が合うのかもしれませんね。  加賀見君はちょっと変です。  いえ、元々変なところはありましたが。  一年生の時から、散々右京君に「友達作れ!」なんて言っていたのに、右京君が他の人と話しているのを見るとムスッとして拗ねています。  加賀見君と言えば、右京君は加賀見君を避けているようです。一緒にいるのを見ても、どこかそわそわしています。あんなに打ち解けていたのに何があったのでしょう。  その様子を見ている加賀見君は何やらニヤニヤしています。  ……変です。  あとは……あ、そうです!  加賀見君が女遊びをやめたというのは、学校でちょこっと話題になっています。それも変なことの一つです。  加賀見君は、女の子に告白されると断れなかったんですから……。  左京君はそれを難しい顔で見ています。 そして時々、加賀見君に釘を刺しているようです。「右京を傷つけたら許さない」と。  ……加賀見君は無自覚なところがあります。加賀見君と右京君以外は薄々気づいているというのに。
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