第一章

4/45
前へ
/405ページ
次へ
「右京、まだクラスに友達出来ねぇの? 左京とばっか一緒にいてどうすんだよ」  痛いところをついてくる。 「しょうがないだろ。話すの苦手なんだから……」 「そんなこと言って、これからも左京とだけ一緒にいんのかよ」 「ちょっと加賀見……」  左京が心配そうな顔をして、加賀見に非難の目を向ける。 「ま、いいけどさ。左京以外では俺にだけ懐いてるみたいで可愛くて」  は? 「そうなんだよね! 俺も右京がいろんな人と話せた方がいいとは思うんだけど、可愛くてついつい手を焼いちゃうというか! 他の人にあげたくないんだよね!」 「やっぱ左京も!? 野良猫手懐けたみたいなんだよな!」 「ね!」  なんかおかしくないか!? 俺は野良猫か!? 「左京はまだしも、加賀見にそんな風に思われんのは癪にさわる……」 「え、なんでさ!? 俺達親友じゃん!」  親友、と言われてちょっと黙ってしまう。  だって、今までそんなこと言われるような友達いたことないから。 「あれ? 違うの? おーい、右京?」  急に黙った俺に、加賀見が顔を覗き込んでくる。 「右京、嬉しいんだよね」  俺の心なんかお見通しの左京が、クスクスと笑う。 「言うなよ! 左京!」 「え!? 何、照れてんの!?」  俺は恥ずかしくなって腕で顔を隠した。それなのに、加賀見は面白がってその腕を無理矢理引き剥がす。 「うわ……顔真っ赤」 「ほっとけ!!」  俺が他人と話すのが苦手な理由。それはこれも含まれる。  赤面症なのだ。  ちょっとしたことで、すぐに顔が赤くなる。それが恥ずかしくて、俺はなかなか人と話すことができない。 「右京はすぐ赤くなるんだから。可愛いねぇ」 「でしょでしょー? 右京は可愛いんだよ!」  左京はなぜか誇らしげに加賀見に言う。  どう考えても可愛いのは左京なのに。 「皆も右京が可愛いことに気づいてくれるといいのにね」  そんな笑顔で言われても。 「その仏頂面がいけないんじゃねぇの? 左京みたいにニコニコしてりゃぁ自然と人なんか寄ってくるだろ」  なんて適当な。  そりゃぁ加賀見くらいカッコよければ、誰でも寄ってくるだろうけど。
/405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

844人が本棚に入れています
本棚に追加