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◇
放課後、俺と左京と加賀見、そしてキューピットさん(仮)は人目を避けて、学校の屋上にいた。
昼はカップルたちに人気があるが、放課後に屋上にくる人なんかいない。
俺は情けないことに、初めて話すキューピットさん(仮)が怖くて、左京の少し後ろに隠れるように立っていた。
「お兄さんの方はなんでそんな引き気味なの?」
キューピット(仮)さんに話しかけられて、俺の心臓が飛び上がる。
「なっなんでもないので話を進めて下さい!」
どもった。情けない。
「そう? 同じ顔なのにずいぶん性格違うみたいだね」
キューピットさん(仮)は俺と左京を交互に見ながら言った。
猫のような目が俺を見る。綺麗に澄んだ瞳。
さっきの第一印象では、加賀見のように軽薄そうに見えたのだが、その瞳の綺麗さから、今度はそのような印象は受けなかった。
「どうしたの? 橘君?」
どこか色っぽく口角をわずかに上げて、微笑んで話す。
「なっなんでもないです!」
またどもった。この人の顔、心臓に悪い。
「キューピットさん、今度は左京なんすか?」
加賀見が口を開いた。どうやら加賀見はキューピットさん(仮)と知り合いらしい。
「そうそう。左京君相手の依頼は多いし、加賀見君と同様に、皆の依頼を受けてたら修羅場続発だから今まで受けなかったんだけどさ、あまりにも真剣だから受けてみました!」
キューピットさん(仮)は楽しそうに目を輝かせている。
俺は全く状況がわからない。それは左京も同じようで、珍しく困惑が表情に浮かんでいた。
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