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「キューピットさんが協力したいと思う女の子が現れたのかぁ。すごいじゃん、左京」
加賀見が感心したように言うが、左京はよくわからないのか、眉間に皺を作っている。その難しい顔をしたまま、キューピットさんを見つめている。
左京がそんな表情を人に向けるなんて珍しい。
「加賀見、わかるように話せよ」
俺がこそっと言うと、加賀見ではなくキューピットさん(仮)が俺を見た。
「何? 橘君?」
「う、あ、なんでもないです……」
俺はまた一歩下がる。
「キューピットさん、そいつ本当に人見知りなんで。怖がらせないで下さい」
加賀見が俺を庇うように前に出る。
「ふうん。人が怖いんだ。不便だねぇ。ま、いいや。俺が今関心があるのは左京君の方だから」
そう言って俺から目を離し、左京を見る。
「左京君、俺のことわかる?」
「えっと……キューピットさん?」
左京が言いづらそうに答える。
あだ名なのか!? まぁ、あだ名以外にはありえないが……。
「そうそう。聞いたことある? 俺のこと」
キューピットさん(仮)はそんなに有名人なのか!?
俺は友達が少ないため、学校の噂だとか、流行りの話題だとかに疎い。もしかしたら、キューピットさん(仮)は学校の有名人なのかもしれない。まぁ、これだけ整った容姿だ。目立たない方がおかしい。
「噂でチラッと……。本当にこんなことやってるんですね。びっくりしました」
左京は驚きつつも、事情がわかってきたようだ。何もわかっていないのは俺だけらしい。
「右京、この人キューピットさんって言ってね。恋のキューピットになるべく毎日走り回ってる人らしいよ」
左京が説明してくれるが、はっきり言って意味がわからない。
「恋のキューピットぉ!?」
我ながら間抜けな声が出た。
だって実際にそんな単語耳にする機会そうそうないだろ!?
恋のキューピットなんて。
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