第二章

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 ◇  翌日、俺と加賀見が放課後屋上に行くと、そこには誰もいなかった。まだキューピットさんたちは来ていないのだろう。俺は何となくほっとして肩の力を抜く。 「緊張し過ぎ」  加賀見に頭を軽くこずかれた。 「わかる?」 「わかりやす過ぎ。顔強張ってるし。俺やキューピットさんがいんだから、ちょっと力抜けよ」  そして、「はい深呼吸―」と言って、俺の腕を持ってラジオ体操で深呼吸する時みたいに大きく動かした。 「はは、なんだよ、これ」  思わず俺が笑うと、加賀見も笑った。 「ほんとちっちゃいのな。右京」  その言葉に反論しようとして、後ろに立つ加賀見に首だけを向けた。すると、顔が思ったより近くにあって不覚にもびくっとしてしまった。昨日左京が言っていたことが頭をよぎったからだ。 「何? 右京?」  何か言おうとしていたのに、急に言葉を失った俺に、加賀見が眉を寄せる。 「さ……左京に、あんま変なこと言うなよ……」 「変なこと?」 「俺と……セッ……セックス出来るとか……。加賀見にとっては冗談かもしれないけど、左京本気にして心配してるから……」  内容が内容だけに、俺は恥ずかしくて目線を下に向けてごにょごにょと言った。  一瞬ぽかんとした加賀見が、俺から手を放す。
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