第二章

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「本当は、セッティングとかはどうでもよかったんだ。場所を変えたところで、結果は変わらないから。学校でもなんでもいいんだ」  そう言われてしまうと、結局俺たちが出来ることは左京を慰めることだけということになってしまう。 「そうだな……。人に聞かれるのはやっぱり良くないだろうから、休日に左京君を学校に呼び出してもらえるかな?」 「それだけでいいのか?」  キューピットさんが尋ねると、先輩は笑って答える。 「それだけじゃないよ、葛城。話を聞いてもらって、心配してもらって、迷惑かけて。こんなにしてもらってる。十分だよ」 「何も聞いてない」 「何? 葛城?」 「何も聞いてないって言ったんだよ。櫻野、君は何を抱えてるんだ? なぜ隠す?」  キューピットさんが押し殺したような声で言うと、櫻野先輩はきょとん、とした。 「何のこと? 今話したのが全部だよ? 他には何もない」  笑顔で答える櫻野先輩に、キューピットさんは悔しそうに唇を噛んだ。 「俺に話す気はないってことだね。わかったよ。今度の土曜日、またここでいいかい?」 「あぁ、よろしく頼む」  キューピットさんは、振り返ることなくドアの方へ歩き出した。俺と加賀見は何のことかわからず、しかし様子がおかしいキューピットさんを放っておけずに顔を見合わせる。
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