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『生活』
初めてこの街に来た日は
吸い込まれそうな晴天
太陽の輝きは私を消してしまいそうで
なんだか少し恐かった
生まれた街を離れ
誰も知り合いがいない街
連絡をとれるものは携帯電話のみ
でもその携帯電話も
私を必要としていない
『ありがとうございましたー』
店員のお決まりのセリフ
関わりがあるようで
そこには屈強な壁が存在している
歩道橋が夕日で真っ赤に染まっていた
このモノクロの世界で
美しく色づいているのに
誰もそれを見ようとはしなかった
真っ暗な夜に
信号待ちをしている人の中にいた
大衆に囲まれてただ茫然と立っている
青い色がついたとき
機械のように一斉に人が動きだす
勿論、私も同じように歩きだした
人混みのど真ん中にいた私は
なんてちっぽけで無力なのだと
ただ一筋の涙を流した
長い、長い夜だった
私が見た夢には
鮮やかな色がついている
現実はモノクロの世界なのに
こんなにも幸せそうな場所があるのか
深紅と漆黒の花を持った一人の少女
私の目の前にやってきて
『この街では生きられない』
そう言って去って行った
私はそれを追いかけようと手を伸ばす
それでも少女を求めることは出来なかった
そのとき、私が見たものは
いつもの色のない世界だった
私はこの街で生きている
腐敗したような街で
私はただ生きている
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