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東の果て、大きな滝とそびえる黒岩峡谷を抜け、北北東に大人の足で二日くらい歩いたところに、俺の故郷はある。
そこは一年を通して魔の花が地を覆うカミナシの湿原。
住まう人々は魔を操り呪をもって国に尽くす、華沙というトクベツな役割をもった人々。
……詳しく話せば難しい話になってしまう。
だから今は簡単に、俺の故郷はあまり一般的な故郷じゃなかった。と知っててくれればいい
さて、カミナシの湿原にはいくつかの集落があるが、俺はそのなかで一番小さな集落の族長の嫡男だった。
俺たちの一族の得意は触呪。
つまり、触って呪う。
呪いのなかでは一番強力で危険で、しかし使い勝手の悪い呪術だ
そのせいで役目を回されることは少ないわ、回ってくる役目は命と引き換えになるような危険な奴ばかりだわ、とにかく小さな頃から自らの一族について嫌な歴史ばかり教え込まれたお陰で、自分の未来について明るい希望を抱くことが一度もなかった
だから西の森に鬼が現れ、始末しろと俺たち一族に命がくだったとき、正直ラッキーだと思ったんだ
(これで苦しまずに死ねる)
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