エピローグ

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四年前、タケヒロ、公園の植え込み 絶対持ってたんだ。 握りしめてた。 寒くて怖くて、助けてって思って。 僕を助けてくれたのは、サンタさんだったけど。 『タケヒロ!!』 って名前を呼んでくれたんだ。 きっと散田さんがサンタさんを呼んだに違いない。 僕の宝物、出てきてよ。 お婆ちゃん待たせてるんだ。 ああ、また呼ばれた。 もうちょっと待って。 誰かに拾われたのかな。 カラスが持ってったのかな。 這いつくばって地べたを探しても見つからない。 泣きそうになってきた。 くたびれたゴムボールを見つけた。 違うよ、こんなのじゃない。 邪魔だよ、お前。 掴んで何の気なしに右側に避けた。 すると、ゴムボールはゆっくりコロコロと動き始めた。 あ…………。 目では解らないけれど、ほんの少し坂になってるみたいだ。 コロコロ、コロコロ ゴムボールは向かい側の木の根本で止まった。 お婆ちゃんが呼んでいる。 タクシーを待たせてるって、ちょっと怒ってる。 急がなくちゃ。 お願い、そこにいて。 またゴムボールを避けて、顔を地べたにつけるようにして、木の根本を探した。 …………あった!!!! ちょっとだけ土がついた、パチンコ玉。 僕の宝物。 大事に大事に握りしめる。 もうなくさないよ。 大事に持っていたら、きっといつか会える気がするんだ、 あの、パチンコばっかりしてるだらしないサンタさんに。                             Fin
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