タケヒロ

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「ちょっと待ってろ、動くなよ」 立ち上がってガキを振り返ると、明らかに彼は怯えた顔をした。 「警察にいくの?……行かないで、お願い!!」 「ばーか、違ぇーよ」 俺は尻ポッケの財布を叩いた。 「俺の肉まん買ってくんの。お前もまだ食えるだろ?」 ニヤッと笑ってベンチを後にする。 コンビニは公園の真向かいだ、大した時間はかからない。 最近のコンビニってやつは便利だ。 大概のものが揃う。 今日が敗けを取り返した日で良かったな。 俺は勝った日は何かしら運のお裾分けをするんだよ。 ポイポイと必要なものをかごに放り込み、レジで肉まんを三つ注文して支払いを済ませた。 ベンチに戻ると、ガキの姿はなかった。 さすがに警戒したか……そう思ったが、彼は再び植え込みに身を潜めてこちらを見ていた。 「動くなって言っただろう」 「だって……お母さんに言われたんだ。 大人に見つかるなって」 「俺も十分大人ですけど?」 笑いながら返すと、ガキは植え込みから出てきながら、遠慮がちに言った。 「だっておじさんはあんまり真面目そうな大人じゃないから大丈夫かなって……」 俺は噴き出した。 「ハッハッハ、確かに真面目じゃねーな。 ただ、オジサンてのは聞き捨てならんな。 おにーさんと呼べ、おにーさんと」 ガキはベンチの隅にちんまりと座る。 「ほれ」 ほかほかの肉まんを手渡し、俺も二つ続けざまに食べてお茶を飲んだ。 公園の時計を見る。 ……そろそろ時間だ。
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