鈴木 唯信

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カタカタ ゴミに溢れた狭く汚い部屋にタイピングの音が響く。 四畳ほどの部屋はベッドに半分以上のスペースがとられ、他には小さな机と本棚が1つずつ。 本棚にはところ狭しとフィギュアが並び、漫画があっちこっちに散らばっている。 カタカタ 小さな机に置かれたパソコンの画面に次々と文字が現れては流れていく。 中では何人もの人が猛烈な早さで音のない会話をしていた。 内容は誹謗中傷の嵐。自分のことは棚にあげ、人をバカにした内容で溢れている。 「どいつもこいつもゴミばかり。頭が悪すぎるだろ」 パソコンを打ちながら独り言を言う男。 伸びたい放題の髪に黒いふちのある眼鏡、ずんぐりむっくりなでかい顔でやたらと目だけがぎらぎらしている。 世に不満を持ち、人と接することを拒否した引きこもり。 世の言う“ニート”と呼ばれるものの1人。 彼は9年前からこの部屋とパソコンの中のみが自分の世界となっていた。
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