第3話:待ってるひと

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「ああ、悪い」 少し掠れた低い声。 「寝てて気づかなかった」 ちいさな赤い跡が残る背中。 「今から行く」 目を閉じて、 耳を塞いだ。 「×××××」 ――――――――――――――――――――――― リビングのソファーの上で膝をかかえる。 アイツを取られた気持ちになる。 いや、取られたとか取られるとかその前にアイツは物じゃないだろ。 あ、でも あの可愛い彼女の『もの』ではあるのだろうか。 背の高い彼に似合う綺麗な彼『女』。 間違えたのだろう。きっとすべてを。 ぎくしゃくしている彼女との関係を心配するフリをして。 面倒になってきた、と何十回も聞いたセリフに。 優しい親友の皮を被って。 『男』の俺が、男のお前を、 好きになって。 ああ、駄目だ。 なんかこれ以上は駄目だ。 目の前が暗くなっていく。 頭に響く警告に従い思考を遮断する。 眠ろう。 うん、それがいい。 少しだけ眠って、 そうすれば 玄関のチャイムが、俺、に、、、しあわ、せを、、 すぅすぅ
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