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「…さてと、そろそろ帰ろうか」
「あ、うん。じゃあ、俺これ返してくる」
「いいよ。恵は先に向かっててよ。俺が片付けてくるから、先にあいつらの所帰ってて」
そう言って、悠里は俺の手から桶を奪っていくと、そのまま駆け出してしまう。
「もう!転けないでよー!!」
声を掛けたら掛けたらで、ヒラヒラとこちらに向かって手を振るから、余計に転けないか心配になる。
「ホント…ちゃんと前向いてよ」
悠里が見えなくなってから、俺も荷物をまとめる。
さっきまでの賑やかさが嘘のように静かで、辺りには花と線香の匂いが漂っていた。
今なら…言えるかな…?
「…悠里のお父さん、遼君。
改めまして、牧野恵です。
俺、男だけど、悠里のことは誰にも負けないくらい大事に想ってます。
だから、安心して下さい。俺が悠里をもう二度と悲しませんから」
手を合わせ、どうか二人に届きますようにと思いを込めて言う。
「…またみんなで来ますね」
長野は悠里にとってまだ悲しい場所なのかもしれない。
でも、また浦間さんや、…いつかは悠里のお母さんも一緒に来れたらいいな。
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