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「だよなー!まじで御門さんなんて女選びたい放題だろうなー。あー、羨ましいー」
「…そうだな」
視線の先にいるのは同じ人物な筈なのに…
田中が羨ましく思うのはモテる悠里。
決して俺みたいにその悠里の横に立つ葵ちゃんを羨ましくなんて思わないのだろう。
「…てか、そろそろチャイム鳴るから、仕事場行くぞ?」
悠里が女と喋ってんの見たくない
…なんてやっぱり女々しいよな。
けれども、現実を直視する勇気は未だ持てなくて…まだ悠里たちをじろじろと見ている田中を引っ張っていく。
「あー、俺もあんな可愛い子を彼女に欲しいわー」
「しつこいよ、田中」
「しつこいって、お前なー。牧野も彼女欲しいんだろー?そんな他人事みたいに言うなよ」
早くこの場を去りたいのに、田中はやけに俺に絡んでくる。
「………別にもう彼女とかいいや」
悠里が俺以外と仲良くしてるのは面白くないけど、無理にこの想いを否定するのは…もうやめた。
そう思えるようになったのも浦間さんのおかげ。
けれども、そんな事情を一切知らない田中は目を見開き、俺を問い質す。
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