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「牧野お前、悠里先輩と喧嘩でもした?」
「…なんで?」
コーヒーに口をつけようとしていたら、横の席の同期の久田から突然声を掛けられる。
「いや、前はあんなに仲良かったのに最近あんまり話してないからさ」
訊いてくる割にさほど興味もなさそうな久田に、こちらも何でもないような振りをして話す。
「別に…あんまり会わないだけだろ」
「ふーん?それならいいけど」
それだけ言うと、久田はまたパソコンに向かい出す。
「………」
訊きたかったことそれだけ…?
けど、久田に心配かけるくらい俺らはあからさまに態度に出てるってこと…?
「喧嘩でもした?」って………
無視されて喧嘩にすらなってねぇっての。
仕事中の同期からのまさかのアッパー攻撃に、思わず溜め息を吐く。
…でも、無視されてたら俺からどうこう出来ないじゃんかよ…
そんな誰にも告げられない思いと共に苦いコーヒーを飲んでいると、
「おーい。誰か去年の資料探してきてくれ~」
間延びした部長の声が部屋中に響き渡る。
…聞こえてる。ここにいる全員聞こえてる筈なのに、誰も動く気配はなくパソコンに向かっている。
…久田。お前も絶対聞こえてんだろ。
はぁ…仕方ない。
「部長。俺が行きますよ」
作業も一段落しているし…と重い腰を上げ、部長からの感謝の言葉を背に資料室へと向かう。
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