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「な「もう気が済んだでしょ…」
言葉を遮り、悠里の身体を押しのける。
「…は?」
「悠里、先輩…仕事中ですよ?」
目元の涙を拭い、敢えて笑顔でそう言い放つ。
お願いだから…もうこれ以上俺を振り回さないで。
「早く帰らないと職務怠慢で部長に怒られますよ?」
自分のことは棚に上げて、早く仕事場に戻るように促せば、
悠里はしばらく俺を見つめた後、上着を拾い上げ、ドアを開けた。
素直に従ってくれた悠里にほっとしていたら、
「先に戻ってる。…けど、まだ話は終わってないから」
それだけ言い残し、ドアが閉められた。
「…何だよ、それ」
まだ話は終わってない??
「こっちがどんな…っ!!」
どんな思いで笑って話を切ったと思ってんだよ!!
止まった筈の涙が再び頬を伝い、立っている力も尽き、ずるずると壁づたいに座り込む。
もう無理、だろ……
自分は女が山ほどいんのに、俺も離れるのは許さないって何なの?
……悠里は俺を…どうしたいわけ?
「ふ…うっ…」
全然答えは出ないのに、涙だけが馬鹿にみたいに溢れ出す。
…助けて……
そんな心の悲鳴と共に俺は電話を掛けた。
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