第1章

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吐く息も十分なほどに白くなった師走。 その文字通り、俺はバタバタと忙しく動き回っていた。 曇り空の外に出ると雪が降ってもおかしくないくらいの寒さに身を震わせ、大慌てでダッフルコートを取りに一度出た家に戻った。 駅に着くまでクシャミを三発。 マフラーもしてくるんだったな、なんて後悔しながら待ち合わせ場所へ急ぐ。 『ーーえ、引越し?』 一ヶ月前、久々に電話をした相手が意外そうな声を出した。 『なんでまた、そんな急に……。 なにかあったのか?』 俺の恋人……セータは、電話越しにもわかる不服そうな声でそう言った。
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