9人が本棚に入れています
本棚に追加
/400ページ
「いや、決めつけは禁物だわ…」
再び小声にて静乃。
何気ないようでいて実は重要なカギである寝言をグラロークが口にしたのは、その直後のことであった。
「うーん…
キノービ会の誓いとはそんなに絶対的なのですかミンチン寮長?
痛い!
何故わらわがぶたれねばならぬ!
離せ!
痛い!
痛い!
乱暴はよさぬか!
(泰)痛いよぅ…
寒いよう…
お腹空いたよぅ…
助けて兄様…」
「…」
語尾の泰王国語こそ分からなかったものの、静乃の脳裏にはおぞましい光景が鮮明に浮かび上がる。
それは従兄武夫から誕生日プレゼントに貰った洋書
『A little princess』
の一場面に他ならなかった。
「姫様からミンチンというチューレンをつけられる程の悪どい寮長か…
一式さんに知られたら、間違いなくイラブーの巣に放り込まれるわねその寮長。
姫様…」
ふと呟く静乃。
やがて彼女の両腕が、グラロークをそっと抱き締めるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!