南蛮皀莢(さいかち)

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 海軍さんの街の仲間入りをしてからもうすぐ二年。 海沿いの飛行場上空付近を飛ぶ飛行機の爆音を除けば、佐伯の街は今日も長閑な佇まいである。 今静乃とユリネとグラロークは、静乃の家から少し離れた所にある松並木に沿って昼食後の散歩をしている最中であった。 静乃の話に拠れば、普段このあたりは佐伯中学に通う学生たちと彼等が通学に使う自転車とたまにではあるが馬とで、時間帯にも拠るが大層賑わうそうである。 しかし今は夏休み中という事もあり、佐伯中学校内には部活動の学生以外殆ど人影は見られなかった。 そんな中を三人は、松並木の土台となっている石垣に上ったり下りたりしながら、松の見事な…というよりどちらかと言えば鬱蒼とした枝振りと、枝と枝との間からたまに覗く青空と、道に沿って築かれた立派な石垣とを交互に見ながら歩いてゆく。 特にグラロークは、まるで子栗鼠のような身軽さであちらこちらへと目まぐるしく動き回っていた。 一口に石垣と表しても、それは石垣と呼ぶにはやや高く石壁と呼ぶにはやや低いという、何とも特徴そして趣のある石垣である。 やがて流石にそんな石垣の上り下りに少し疲れたのか、グラロークは辺りで一番涼しそうな木陰にチョコンと腰を下ろすのであった。
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